30歳過ぎから工学 vol.2

http://d.hatena.ne.jp/j130s/ から移行しました.オープンソースロボットソフトウェア技術者兼主夫. 高校・大学学部文系-->何となくソフトウェア開発業-->退職・渡米,テキサス州でシステムズ工学修士取得,しかし実装の方が楽しいと気付き縁があったロボティクス業界で再就職.現在 Texas 州内の産業用オートメーションのスタートアップに Georgia 州から遠隔勤務.

米 startup の採用 mtg に出た

訳あって職場が移りました.所属は変わらないけど,これまでの 60 人くらいのオフィスから,15 人程度のオフィスに移動.家から徒歩 3 分だったのが車で 20 分になり,食事も 3 食自分で補給.夢の世界からフツーの企業に舞戻った感じ.それでも startup 的な小規模なので色々普通でないですが.
先日突然 hiring mtg に呼ばれました.応募者の書類を社員ほぼ全員でチェックする会.短期雇用者がなんで呼ばれたのか今だによく解らないし,結果や会話内容を公開していい筈は勿論無いですが,へえ〜こうやって審査するのか!と渡米四年目にして初めてみる光景だっただけに目ウロコ落ちまくり.想定していた事が実際その通りだった,という項目も多いですが,とにかく米就活として一般的に役に立つと感じた内容を略記します.ちなみに背景情報としてこのオフィスは非営利企業,従業員の 9 割が工学の博士号取得者で半数以上米国育ち人.募集もエンジニアのみ.この日の会議はスクリーニングであり,最終的に採用する人を選ぶのではなかった.

  • まずキーワードで目を引くことが成功したら,文章を読んでもらえる.
  • Cover letter はやはり "必須"!!.やる気をはかるのに重要.しかも,"一般的な自分の強みの紹介" と応募企業への売り込みの二本立てが必要
  • 学校名,reference (日本語だと推薦者?) 名は有利.従業員が知ってる校名/人名はやはりそれだけで注意が払われる.かといって知られていることは必須でも無い感じで,あくまで実力勝負.
  • 実際,Cover letter に P@nasonic 宛と間違えて送ってきていた有名校の学部生の応募者は落とされた.
  • 得意技術の説明は資料 (写真,ソースコード) が有効.ソースコードも,さーっと眺めるだけなので,クラス設計の良し悪しのような,よーく見ないと分からないものは少なくともこの段階では見られない.むしろ見られるなのは,あまり使われない関数とか変な文法とかが無いか,嗜んでおくと良いとされるライブラリ (C++ なら boost とか) が使ってあるとプラス,とか.
  • 長い履歴書 (1 ページ以長) でも今日は読まれていた.冗長性はどうでもよく,この企業との接点を探し出す感じ.
  • 特に小さい企業だからか,"一緒に働きやすそう" は無視できないらしい.必須じゃないが,会話が弾む人の方が印象は良くなる,とある社員は言っていた.

関係ないけど池の写真.池と,その向こうの湖が重なるアート.その名も Infinity Pool.Dallas の植物園で.

急展開.米に残れるか否か

日本ならやっとそろそろ仕事すっか的な頃合いかも知れないですがこちらはもう仕事第一週の金曜を迎えます.
先日書いたように今年は/も就活が最重要ですが,年始早々,今の契約の延長のオファをお年玉的に頂くことができました *1
それはそれで良かったものの,予想外に visa が 3 月までしか有効でなく,延長もそれまでとせざるを得ませんでした (#1 詳細理由).
今の勤務先に 3 月より後も居続けたければ,(1) J1/H1 等雇用主にスポンサーとなってもらい visa を取得する,(2) 自分で visa をどうにかする,の二択のみです (オファを新たに頂けるという根拠のない前提ですが).或いは勤務先を問わず米国に残りたいのであれば (3) #1 に書いた STEM Extension が使える雇用主からオファを頂く,というのもアリ.
直属上司に早速訊いてみたところ (先日書いたとおり年末に沢山働いたので今は聞き易い),J1 はスポンサーした事がある,ただし当然フルタイム採用のステップを踏まねばならん,フル T 採用過程に進むにはもうちょっとアウトプットの量が欲しいネ,とのこと.まだ 2.5 ヶ月しか働いてないから当然といえば当然ですね *2.もうひとつの H1 の方は取得できる時期が秋と決まっているため今回はありえない.
というわけで急展開ですが米国に残れるか否かが急に切羽詰まってしまった.(1) 〜 (3) どれも検討しつつ猛進します.1 〜 3 月はこれに集中すべく今までより更に色々諦めなきゃいけなそう.特に,ぜひ今の企業にそのまま居たいので,アウトプットを沢山出すべく仕事を頑張ります.



#1 私は学生 visa が認める卒業後トレーニング期間,通称 OPT で就業しています.OPT は卒業後 12 ヶ月有効で,ただ私は色々あって *3 2 ヶ月短い 10 ヶ月,つまり 3 月いっぱいまで有効です.また,OPT には STEM Extension と言って,科学/工学系専攻の学生は最長 17 ヶ月さらに追加で OPT を使えます.ただし STEM Extension を適用するには,雇用主が連邦政府に E-Verify という制度を通してその旨を申請していなければなりません.
私はてっきり,しっかりした活動をしている今の勤務先のような企業ならどこでも E-Verify に登録しているだろうとたかをくくっていましたが,念の為調べたところ登録しておらず,人事担当者に確認したところ,主に法務的な理由で登録しないことに以前決めたのだそう.

*1:ところで,1 月が会計年度始まりな米国では,仕事探しは新規採用の予算が決まる 1 月を狙え☆,という助言をたまに聞きます.だからか知りませんが,今週だけでリクルータからの連絡が 5 個もあった.いくら何でも多過ぎ.残念ながらどれもちょっと自分に合わなそうですが.

*2:ちなみにインターンから正規採用となった人はこの企業にはこれまで何人もいますが,それらの殆どがインターンを二期,つまり合計 6 ヶ月以上行っている.それらの殆どが博士持ち.知る限りではあるが修士卒でインターン一期のみで採用された software 方面の人は居ない.まあこの学位の差,インターン歴の差は,逆に職務経験から得たものを現業に反映してみせれば大丈夫だろうが.

*3:卒業前最終学期に OPT を利用開始できる制度,通称 Pre-graduation OPT または単に Pre-OPT を使用済.これを使うと在学中でも働くことができる.私は結局これを使って就業することはなかったが,申請して認可は受けていて,その認可された期間分が引かれる.

2013 年抱負

ブログ更新頻度が年齢と反比例・新陳代謝と比例して落ちていますが,今年もよろしくお願いします.
年末は家族が帰った後は仕事に明け暮れました.その甲斐あったか (?) 所属するチームは最新版ソフトウェアをリリースしました.
ROS (Robot Operating System) Groovy Galapagos
ROS シリーズの 6 版目ですが,今回は絵がとびきりファンキー/ヒッピーです.早速 T シャツがオフィスで配られましたが,オレンジ色地にこの絵が印刷されたシャツを今後一体どれだけの人が着こなすのか,注目です.
世界中のほとんどの国では 2013 年元旦のリリースとなってしまいましたが,発表されたのは西海岸時間で 12 月 31 日午後 10 時.ぎりぎり 2012 年です.
私はリリース担当チームのメンバー (インターン) として幾つかのモジュールを作った他に,古いチュートリアルのオーバーホールもしました.量が多かったり,かなりのサンプルが動作しなくなっていて原因を探ったり修復したり*1で,大変でした.まあ東海岸の実家から遠隔で仕事をしていたマネジャーがそれを汲み取ってくれたらしく,ユーザ用メーリングリストで名前入りで告知してくれました http://goo.gl/D8YKI

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年末年始を米国で就職した状態で過ごすのは初めてでしたが,正月以外は休みにならない (休みとる人は多いが) ので,Facebook などで日本の人々の豪華な休暇っぷりをみて随分と温度差を感じてます.



さて,今年の抱負などと上級のタイトルをうっかり付けてしまったので真面目に今年の目標を語ります.とその前に,2012 年は個人的には思いがけず上り調子のいい年になりました.今年はさらに上っていければ良いですね.今年の目標は:

  1. 米国内でフルタイム就職

これに尽きる.
去年 5 月に大学院修士課程を卒業後,2 つのインターンシップを経てきています.インターンは福利厚生が基本的に無く,学生扱いなので仕事の責任も少なく,バリバリやりたい身には物足りない面もある.何より期間限定なので就活は止められず,気が休まりません.
気が休まらないというのは言葉で書く以上に重く,仕事以外の,趣味や人との会話に集中するのが難しい場面がだんだん多くなってきました.これはいかんので何としても今年は身を落ち着かせます.
また,米国内で外国人として就職するためには色々制度的制限 (= visa 問題) をクリアすることも必要になります.
プライベート面でも,機が熟してきた事があるので,そちらのステータスにも変化があるでしょう.



その他,小さな new year resolution は,昨年のものを以下レヴューします.

1. 毎週隔日で酒を呑む (Serious Dull からの再脱出
2. 毎食自炊
3. 減量 (155 lbs 切り,つまり 10 lbs 減)
4. ハーフマラソン 90分切り
2 はほぼ達成,それ以外は頓挫したので今年に持ち越します.ハハハ.
あと,もう一個追加しよう.

5. 1:30 am 前に寝る
遅くまで起きてると疲れが抜けんけんの!
今年もよろしくお願いいたします.

*1:チュートリアルの更新は,本来は該当する各モジュールメンテナンス責任者の仕事といって良いが,オープンソースコミュニティ,まだそういう責任が明文化されてません.

ロボットと災害救助

2012 年もあと数日で終わるというのに一向に実感がないです.先日も書いた通り,勤務先でソフトウェアのリリースを年内を目指しており,年内一杯は出勤 --> 午前様なので (というかアメリカはもともと年末年始は働く人も多いようですが).
その 2012 年ですが,ロボット研究業界では一つ大きな出来事として,米国防総省の研究機関が日本円にして総額数百億円を研究者に分配するプロジェクト "DARPA Robotics Challenge" を開始しました.テーマは災害現場で役立つロボットの開発であり,背景としてハリケーンカトリーナ,メキシコ湾の油田事故や一番直近の福島第一原発事故など,大災害でロボットが重要な役割を果たした事が挙げられています.
この度,災害現場でのロボットの活用を推進している米テキサス A&M 大学のロビン・マーフィ教授が,日本の政府機関に災害ロボットに関し提言を行ったようです.彼女自身,東日本大震災が起きて以降何度もロボットを引き連れて被災地を訪れており,頭が下がります.私の第二の故郷テキサス州の先生ということもあって,個人的に応援している先生でもあります.このニュースが日本語の記事になっていないようで,日本が強く関係しているのに日本人の目にまったく入らないのは残念なので,このリンク先に翻訳を試みました

*1
ロビン・マーフィ教授

(ニュース記事の全文和訳) 災害救助ロボットの権威が日本政府に提言

原文 http://www.cs.tamu.edu/news/items?id=3172
あるいは http://crasar.org/2012/12/19/murphy-offers-suggestions-to-japanese-government-for-faster-international-deployments-of-rescue-robots-press-release/

マーフィ博士が日本政府に,災害救助 "レスキュー" ロボットの迅速な国際展開について提言

レスキューロボット分野のロビン・マーフィ博士が 12 月 11 日,NEDO (独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) と懇談しました.

マーフィ博士は テキサス A&M 実験施設 (TEES) 内に設置された the Center for Robot-Assisted Search and Rescue (CRASAR) の所長であり,テキサス A&M 大学計算機科学科で Raytheon 教授も務めています.

NEDO は日本の産業の競争力向上を支援する新しい組織で,レスキューロボットの国際チームを組織することを検討中です.マーフィ博士は,(New York の) 世界貿易センタービル崩壊やハリケーン・チャーリーやカトリーナ福島第一原発事故などを含む 15 箇所のロボット派遣任務のリーダーを務めた経験を踏まえた知見を提供しました.

"人命救助が効果的なのは最初の 3 日間ですが,ロボットが配置されるのは災害発生から平均して 4 日経った後であり,役目を果たすには遅過ぎるのです" とマーフィ博士.

福島第一原発の例では,日米の適切な機能をもつロボット達は既に日本に集められ,すぐにでも使える状態だったものの,情報不足やロボットへの信頼の欠如など色々な理由により,最初の飛行/地上ロボットが使われたのは発生から 1 ヶ月後でした.

障壁は資金ではなかったとマーフィ博士は言います.彼女が指揮する CRASAR の Roboticists Without Borders program (国境なきロボット研究家団) には,幾つもの企業が常に無償で,ロボットと専門家を災害救助に提供してくれるからです.

マーフィ博士の提言は 3 つでした.はじめに米国と日本は,レスキューロボットの理解を促進し迅速なロボット展開を可能にするため,国家間や組織間のネットワークを構築するよう協力すること.2 つ目に,人員の移動/物流,トレーニングやロボットの整備など必要な準備のための資金を政府同士が確保すること.3 つ目にロボティクス産業や研究コミュニティが継続して改良できるよう知見をフィードバックできる仕組みを構築すること.詳細は CRASAR のウェブサイトをご覧下さい.www.crasar.orgCRASAR

TEES はテキサス州の工学研究機関で,テキサス A&M 大学システムの一部です.

クリスマスイヴ,リリース目前

クリスマスですね.米国滞在初となる母と,姉と,GF と短い休暇をのんびり過ごしました/過ごしてます.今晩は Stanford 大学の教会で (カソリックだが訂正; Wikipedia によると non-denominational な様子.) イヴ礼拝にいってみます.
職場もほぼ全員休暇ですがに来てみたら結構人が働いてるし (イヴは休日ではない),メールは活発にやり取りされてます.というのもオープンソースで運営しているソフトウェアの次期バージョンの近日中のリリースを目指しているため.全米中の家族のもとに帰っていったメンバー達も時間をみつけては仕事しているらしい.私も今日明日は午前仕事,午後は家族と過ごします.ブログ書いてる場合じゃないね!メリークリスマス!

休暇で行った Napa の Silverido Vineyard.ワイン好きじゃないんだけどワイン樽の甘い匂いは大好きだということが分かりました.

新仕事.労働環境にアガる

さて California に帰って来てまた短期ですが仕事始まりました.新しい企業で仕事する事自体はこの 1.5 年間で 3 度目なので,勝手がわからないことによる初日のどきどきは少なかった.しかし今回はこれまでの 2 社と違い世界的大企業ではないのでちがう部分があるかな…,という不安はありましたが,果たして始まってみたら本当に良い意味で違いすぎて驚いてます.というか,いかにも "イメージ通りのシリコンバレー企業" キタ━と叫ばずに居られない感じ (実際には叫んでないが).とにかくぶっ飛んでる.
一週間という,深い観察も何もあったもんじゃない期間の範囲で見聞きした中で,自分的に驚くのは (順不同):

  • 短パンで仕事してる人がいる
  • 帽子/ハット被りながら仕事してる人がいる.ビーサン,裸足,ヘッドフォンかけながら歩いてる人もいる
  • 全員,デスクが電動で上下に高さを変えられる.起立して仕事してる人もいる.
  • 起立してるだけじゃなく,トレッドミルをデスクの下に置いて,歩きながら仕事してる人もいる
  • マネジャーでも,オフィス内をキックボードですい〜っと移動している (逆にマネジャーしかやってない?)
  • 週二回,bootcamp が朝っぱらからある (任意参加)
  • 短期雇用者向けに,徒歩三分の場所に一軒家が数棟借りてあり,格安で入居可能.
  • その一軒家,テクノロジー系企業の社員の仮宿なのに,インターネットが超遅い (インターネット使いたきゃオフィス行け --> オフィス来たら仕事しますよね?という創業者会長の狙いらしい)
  • 短期雇用者でも 24/7 自由にオフィスに出入りできる (これまでの 2 つの大企業では,朝も夜も時間制限があった)
  • 真夜中/土日でも人がけっこう居る.
  • 廊下を突然大人よりデカいロボットがシャーシャー言いながら歩き去っていく (誰かの実験の一部)
  • 専属シェフが何人もいる.平日は朝昼晩,三食無料.しかも美味い. (again, オフィス快適にしてあげるから仕事しますよね?論理).
  • 金曜は 5 時からビールパーティ.そのままボードゲーム大会に突入.日本で言えばオフィスが雀荘化するようなもの?
  • (11/8/12 追記) TOTO ウォシュレットも発見!

先週一週間のランチはこんなでした.無料な上に食べ放題.そしてこの写真でわかるかどうかアレですが,相当ヘルシー.

1 日目

2 日目

3 日目

4 日目

5 日目

ロボット分野の先端を走る企業の一つと言って何ら語弊はなく,世界中のロボット研究者がこの企業のソフトウェアを使い始めています.そんなわけで社員も自信満々,そもそも色んな所から引き抜かれてきた博士号持ちの凄腕ばかりらしく,あのライブラリ作った A さんだー,とかあのモジュールの設計した B さんだーとかそんな人がウロウロしている.
正直,二年前にこの企業の存在を知った時から,ロボット業界に入るならゆくゆくはここで働いてみたいと思っていたが,見聞するにかなりのエリートしか採用してないらしいので,まだ無理だろうなと諦めてました.それが,短期雇用ではあるものの,人の縁で働けることに.まったく世の中わからないが,諦めず,戦略を立てて目標に向かえば,叶うこともあるんだなと.巡り合わせに驚きまくっています.取り敢えず,なんとかくらいついて行きます.