30歳過ぎから工学 vol.2

http://d.hatena.ne.jp/j130s/ から移行しました.オープンソースロボットソフトウェア技術者兼主夫. 高校・大学学部文系-->何となくソフトウェア開発業-->退職・渡米,テキサス州でシステムズ工学修士取得,しかし実装の方が楽しいと気付き縁があったロボティクス業界で再就職.現在 Texas 州内の産業用オートメーションのスタートアップに Georgia 州から遠隔勤務.

アートとエンジニヤリングとアートな設計図面

夜中四時です. 初雪が降りました. 昨日は 20℃越えたのに. 猫のように, 女心のやうに変わり易いテキサスの空気であることよ.
現代の女心が本当に変わり易いのか否かはさておき,明日のロシヤ語の期末試験に向け作文を書いています. テーマ10個, それぞれに対し 10文以上. 好きな本や映画に関しての文章を書くのが特に苦手なことがわかりました. 感想を表す表現をあまり知らないというロシア語的理由の他, きっと感性的な事柄に対して感想を形容する能力が言語を問わず無いんだわ. 無いというか, 数年前本格的にエンジニヤとしてのレベルうpを志した時に意図的に捨て去ってしまいました. だからこの数年は仕事では形容詞・副詞を滅多に使ってなかったはずだし, 日常会話やこの blog を書くときもそれらを使うのをためらうことがあります. 多い少ない早い遅い, ちょっともっと割と, だの何だの, 定量的で無い表現.
アートについて語るのはそういうわけで下手だし, 語ること自体好きではない. しかしアートに触れるのは好き. ではアートとは何か?一意に特定できる機能を持たない, 感情に訴える人間の活動のことだと勝手に解釈しています. ここ数年, 技術者として極端な訓練を受けてきたので, そのおかげで "一意に特定できないこと" が気持ち悪く感じるようになり, 音楽や舞踏を見て人が "美しい" とか "感動的だ" などと感想を述べているのを聞くにつれ居心地が悪い思いをしてきた. 人によって感想は違う, つまりアートによって提供されるサービスが特定できないじゃん!, と. 凄く極端にかつかっこつけて言ってしまうと, 形容詞で語ることに価値を見出せなかった. ただそんな自分は人間としてどこか歪んでいるのも同時に認識していたけれど, 訓練期間だと思って割り切ってもいました. 最近はその傾向も少しづつではあれど治まりつつあります. 何らかの形容を言葉でしないと人と意思共有はできないし, なんだかんだいっても "美しい!" と唸って身悶えする以外になす術が無い場面は多い. 悲愴, とか.
ところでエンジニアの描く設計図面にだってアートを感じることはあります. 設計図面には, 物体や仕組を構築する際の計画や意図を正確に共有する, という明確な機能があり, 上述の勝手定義に照らせばこれはアートから外れます. しかし人が "これはアートだ" と思って活動することだけがアートではない場合があり, 行為者の意と関係なく受け手側がアートを感じた時にもそれはアートと言えるでしょう. 言えるんだ, とやはり勝手に定義します. 従ってエンジニア(or anybody) が設計図面を見て感動した時, その図面はアートでもあるのです. 私は設計思想や図面を見聞きして胸打たれて涙した, とかいふ経験は残念ながら多くないものの, 情報システムエンジニアとして働き始めた当初に出会った梅田英和氏の分散移動体通信の概念に, よくわからないながらも"これだ"と直感して即上司に push したし, A 社のコンテンツマネジメントシステムのデータストラクチャを知った時には感服してへえええボタンを押し続けた経験がある. 又ある人はとある企業が設計した通信プロトコルの仕様を知った際, 現在世界を支えているプロトコルであるその名も IP(Internet Protocol) よりも素晴らしい設計だと感じ, しかも美しいとすら思ったそうです. そして, ゲノムの解析に携わっている方々はきっと神或いは何者かの崇高な設計意図を見, 感激しているのかも知れないですね.
というわけで, "結果的にアートに成り得る" ような設計図面をいつか書けたら良いなあと心の片隅で思いつつ日々地道にやっています. 最後に, アートな設計をすると思われる人の例として, オブジェクト指向の著作類で有名な結城浩氏を挙げ, 最近買った氏のちょっと風変わりな?著作を紹介して終わります.

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

# 後記: 眠さに任せて一気に書きましたが, 普段思ってきたことをその通りに書いています. ただし, エンジニアリングの肝になる事は何も言っていません. 設計図面が "アートだと感じられること" は, 良い図面であることの必要条件ではありません, と思います.