30歳過ぎから工学 vol.2

http://d.hatena.ne.jp/j130s/ から移行しました.オープンソースロボットソフトウェア技術者兼主夫. 高校・大学学部文系-->何となくソフトウェア開発業-->退職・渡米,テキサス州でシステムズ工学修士取得,しかし実装の方が楽しいと気付き縁があったロボティクス業界で再就職.現在 Texas 州内の産業用オートメーションのスタートアップに Georgia 州から遠隔勤務.

学術プロジェクト浪人

秋学期を通してボランティアで関わっていた航空工学科のプロジェクトが事実上の活動停止状態になってしまい, 残念なんだけども私は抜けることにしました. budget はあるけど能力十分なリーダーが不在な状態です. 今後の私の進学や就職に良い影響をもらえそうだと思っていたプロジェクトだっただけに残念で, 次を探さないといけません.
ここからは詳細. 長いですよ. プロジェクト自体について, いつか書こうと思ってました. 自律式航空機とでも訳せば良いのか, 自分で勝手に目的地まで飛んでって帰ってくるヒコーキを作って, 毎年行われている大学生コンペで飛ばすのです. 米軍主催で, 主要な航空機メーカも出資してるらしい. 自動操縦の飛行機自体に航空業界の関心が高いのかどうか知らないのですが, このコンペで良い成績を取ると就職には困らないようです. コンペは初回から数えもう数回になっていて, 最近では飛ばす事自体はどこのチームもこなれてきたため焦点がソフトウェアの出来に移って来ているそうな. UT-Arlington チームは昨年度大会は総合 3位, ジャーナル発表は 1位だったらしい*1. 今年のチームもその時のリーダー(航空工学科の学部4年生ですが, 幼い頃から模型飛行機を作り続けて来てて, コンピュータ言語もなんとなく操る頼もしい漢)中心に進んできていました.
私は今回の1つの目玉ソフトウェアである, "車載カメラから撮った映像から, コンペ事務局側が地上に設置した看板に書かれた文字を認識する" 機能の新規作成を担当させてもらっていました. 上述の, ソフトに焦点が当たるという点で, 航空機に興味があるけどソフトウェアしか解らない私*2には願ったりでした. ちなみにこの分野, 調べた限り先行研究も未だそんなに多くないチャレンジングな内容で, 正直片手間の学部生がきちんとした成果を出せる分野では無いように思います. が, ここまで調べた事を無駄にしたくないのでここまでの成果は(かなり半端ですが)どこかに公開したいです.
活動停止になったのは, 前述のリーダーがほかのプロジェクトに移ったためです. 技術的にもモチベーション的にも彼が引っ張っていて, 同等の人物が現れるのは難しいと思っていたのですが, まさか後を継ぐ意思のある学生が現れないとは思わなかった. 所詮, と言っては失礼だけれど, 学生プロジェクトであり, 米国の業務の文化としてよく言われる"知識を文書にして残す"ということはまったく行われて来てませんでした. それに例え量的に十分な文書が残されていたとしても質が心配だし読むモチベーションが上がるかも疑問. この手のプロジェクトは有給でないと拘束力が無く, 結果的に属人的になってしまうのは仕方ないと諦めるしかないのかな.
ヒコーキへの純粋な興味はさておき, 授業以外の研究(的)活動に参加する目的は, いつかの日記に書いた通り, 実業の感覚を少しでも維持したいのが 1つと, あとは大学院受験時の推薦状を担当教員に書いて頂きたいのがもう 1つでした. 特に二番目は受験に直結してくるので, すぐ代案を考え出さないといけません. ちなみに米国の大学では大学院生だと研究室から学費を払ってもらうことがごく一般的に行われますが, このプロジェクトはどうもそうではなかったようだし*3, 私の興味は学費 or サラリーではなかったのでこの点は問題ありませんでした.
私がリーダーを務めれば良いのでは?という案もあるでしょう. しかしポストが空いてるという意味では可能なものの, 航空機に関する知識と経験と, 何より英語でのコミュニケーション能力に自信が持てないので到底手を挙げる気にはなりません. 技術系プロジェクトの特徴と言えるのかどうかわからないけれども, チームメンバーはアメリカ人以外にインド人, アフリカ人(どこの国か聞いた事無いや...), 中南米, タイと, みんな英語が違うので聞くだけで大変. それに何より学生主導にしちゃ大きな額の予算を扱うので責任重大. そう, 教員は予算獲得のために名前を貸しているだけで基本的に全作業を学生が行います. 設計も開発の工程管理も, 業者やコンペ事務局との各交渉も, すべてです. 社会人出身としてプロジェクトマネジメントこそ腕の見せ所じゃないかと思った一方で, 学部の授業に着いてくのがやっとの状態なのにモノ作りチームのトップをやるというのは, 許容範囲越え過ぎだと諦めました.
最後に, コンペが米軍主催なのもずっと気にはかかっていたことです. 技術に関わる以上, 何らかの軍事への繋がりは避けられない, というかむしろどんな職種にしても遠からず軍との繋がりはあると思います. しかし, このコンペの目的は無人偵察機つまり兵器の開発を活性化させることであり, 通常の技術的案件に比べてかなり戦争に近い. 今回は自分の立場をどう取ったら良いのか心を決められない内にプロジェクトから離れる事になりましたが, いずれ宇宙開発に携わりたいのであれば(勿論宇宙開発イコール軍事というわけではありませんが), 考えを決めねばなりません.
以下公式と思しき記録動画. 3分50秒前後に, 綺麗に離陸する空色のやつが UTA チームの機体.

*1:ちなみにStanford や MIT 等の所謂 TOP エンジニアリングスクールは出場していません.

*2:航空機というか, 航空業界と言うべきか. 飛行機を作って飛ばしたいという意欲自体は弱いです.

*3:正確には, お金の事を話し合う機会を逃したので詳しく知りません.