30歳過ぎから工学 vol.2

http://d.hatena.ne.jp/j130s/ から移行しました.オープンソースロボットソフトウェア技術者兼主夫. 高校・大学学部文系-->何となくソフトウェア開発業-->退職・渡米,テキサス州でシステムズ工学修士取得,しかし実装の方が楽しいと気付き縁があったロボティクス業界で再就職.現在 Texas 州内の産業用オートメーションのスタートアップに Georgia 州から遠隔勤務.

大学院留学へのステップとしてまず学部へ入学したことの総括

知合いより告知を頂いた "米国大学院学生会" という, 立ち上がったばかりの日本からの留学志望者を支援するための団体のイベントをオンラインで拝聴しました. 予定されているサービスの中にはメンタープログラムという, 希望制の個人支援の仕組みもあったりして, 大学院受験で散々苦労した身としては一年前にこんなのがあれば...と思わずにはいられなかったりしつつ, 運営各位の志の高さに興奮したので, ついでに私も留学関連の記事をば. なおその会は http://gakuiryugaku.net/ から情報を得られます.
常々書いてきたとおり私は日本の大学学部を卒業後ソフトウェアエンジニアとして八年働き, その後理工系大学院留学するために, 日本の学部でまったく履修しなかった理数系の基礎科目をまず米国の大学学部に入って二年間学びしました. やり終えた私の意見・評価とを書いておきます. もちろん, 一般化は不可能と思うので, ある一事例と受け取ってください. また, 正直あまり賛成の声を聞かないこの選択に関し, これまでに伺ったご意見を幾つか紹介します. 私のような選択をされる方が今後増える, とはまず考えられませんが, 居ないとも限らないので一応考えたことを記しておきます. 総括としては, "自分の能力を補う意味では有益だが, 大学院受験に際しては採用する側つまり研究者からはネガティブに見られるのを覚悟しなければならない", という所でしょうか.
■■■ 伺ったご意見 (米国の学校に在籍中の研究者の方が殆ど)
Opi-1. いかなる理由にせよ, 職歴がある状態からの学部再入学はベストチョイスとは思えない
Opi-2. 職歴がある状況での学部への入学は, よほど否定的な事が在職中に起こったのか, と想像させかねない
Opi-3. 例え前職から異分野へ転身を図るにしても, 大学院から始めるべき. 時間の面で費用対効果が悪い
と, 残念ながら殆ど肯定的意見を頂くことはありませんでした. 補足としては, 大学院によっては前提となる授業を幾つか履修していない場合, 大学院プログラムに在籍しつつも学部の該当する授業の履修を認めるということが普通に行われるようです. そういう柔軟さも含めて Opi-3 のようなご意見になるのだろうと.
■■■ 私自身の, この選択への意見・評価
Eva-1. 一般的評価としては, 諸事情を総合し, 特に時間的精神的な費用対効果の観点で, お勧めできない.
Eva-2. 自分自身が学部を選択したことへの評価としては, "学部に短期間在籍する" という選択そのものはあながち間違いでは無い, なぜなら学部開始以前にあまりに欠け過ぎていた工学基礎を習得できたため. ただし二年は自分にとっては長過ぎるのと, 学部課程開始時点で専攻/履修したい科目を明らかにする等, 計画的に行うべき.
補足. Eva-1 について, まず時間的面については察しがつきやすいかと思いますが, 学部の勉強内容の多くが, 大学院の勉強内容に比べ仕事に直接的に役に立ちません. まずその意味で費用対効果は低いです. そして八年のキャリアの後ステップアップするための勉強をしたい状況だと, 学部での勉強内容は(実際はそんなはずはないのだが)退化してるかのように感じられる場合があり得ると思います. そして職務経験から得た能力が活きる場面よりも, 中学高校の受験対策生活から得たスキルを活かせる場面の方が多いのでは?と感じたため, 成績面で良い思いができるということを職務経験は保証しません. したがって, 良い成績を取るためにはストレートに高校から上がってきた学生以上に勉強に時間を費やす場合があると思われます. また精神面においては, 若い学生との意識のギャップ, 想いを共有できる樹会の少なさに苛立つ可能性があります. 私はあろうことか, 最初のうちは若い人達のダメ出しばかり心の中でしてしまいました(そのうちに人間的にもデキた学部生達と触れ合い彼らの大人な対応を見るにつれ, 良い点を認めてあげるのみで良いのだ, と気付くと気が楽になりましたが).
Eva-2 について. 再三このブログに書いても来ましたが, 高校も一度目の大学学部も文科系だった私が, 数式や XYZ 軸座標などを恐れなくなり, 始まったばかりの大学院の授業でも確率や微積分を使った内容に食らいついていけているのは, 間違いなく今後のキャリアにとって価値があると考えています. 一方, 初歩的反省ですが, 開始時点での計画が甘く, 当初計画と結果とでは大きな開きが産まれてしまいました. その最たるものは在籍した年数です. 当初一年で卒業(= 学士取得)するつもりが, 結果は二年滞在ししかも中退(大学院に合格したため)です. またソフトウェア工学専攻でスタートしたのが, 中退時点では計算機科学専攻+機械工学副専攻で, しかもそれらの専攻プログラムの美味しい所(三, 四年生の授業)は殆ど履修できずに終わった. 開始時点からブレずに授業履修計画を進めていれば二年間でもかなり上級コースを取れたのだが. 留学の先輩の友人からも渡米当初に "大学院でやりたい事は変わるもの, と思った方が良い" と助言もらっていましたが, 学部レベルですらそれは当てはまりました.
以上, 駆け足の振り返りですが参考になれば幸いです.

ダラスのスーパーマーケット "セントラルマーケット" のデリで. 富裕層がターゲットのお店で, 品揃えが多く陳列の仕方が工夫されていて, 食材好きにとっては実に楽しいお店です. また試食コーナーも多いので日本のデパ地下並に無料で満腹になることも可. SMU のキャンパス内に住む学生が土日に(暇つぶしに)来ることも多いらしく, 店員のオバちゃんお姐さんに "SMU の学生さんかえ?フォッフォッフォ" となぜか図星られた. 写真は 1kg 以上皿に盛ってみたら $20以上 (2,000円程度)もかかった昼食...富裕じゃない私は, たまらず三日もたせました.