30歳過ぎから工学 vol.2

http://d.hatena.ne.jp/j130s/ から移行しました.オープンソースロボットソフトウェア技術者兼主夫. 高校・大学学部文系-->何となくソフトウェア開発業-->退職・渡米,テキサス州でシステムズ工学修士取得,しかし実装の方が楽しいと気付き縁があったロボティクス業界で再就職.現在 Texas 州内の産業用オートメーションのスタートアップに Georgia 州から遠隔勤務.

牽制球にすら垣間見られる一流の攻防

https://news.yahoo.co.jp/articles/1078bda85efa01cf04eba23cd24fb28d82c40a4c
ピッチクロック〝容認〟の伊原春樹氏「けん制数の制限は断固反対」2つの理由

試合時間改善は大賛成だが,牽制球については本職中の本職・伊原氏が仰るように,野球技術が浅薄化しかねない変更だと感じるので,牽制球が抜け穴になっているという指摘もあり難しそうですが,慎重に議論して欲しいです.

牽制について思い出を一つ.1986年広島-西武の日シリ第一戦,2点を追う広島8回に待望の一塁走者が出て,代走専門のスペシャリスト今井譲二が満を持して登場.塁上でうるさい今井を封じたい西武.執拗に牽制を繰返す西武先発の東尾.しかし緩い動きと山なりの球で,刺したい意思は見えない.ここで牽制球を投げる目的は刺すことでなくて,リードを大きく取らせないとか,何か他にあるのかな,老練な東尾だし,と誰もが感じてそうだったその瞬間,突然ピュっと速い牽制を投じ,虚を突かれたのか,今井は帰塁が遅れて一塁で刺され,結局広島は8回も無得点.

故・北別府と大ベテラン東尾の投げ合いという,明らかに剛力ではなく技術の凌合いが見られた試合.そこへきて,一試合でたった一度の出番にすべてを賭ける走りのプロ今井と,老獪という言葉がまさに当てはまる当時既に200勝達成していた東尾の戦術との対決.牽制球はスコアブックには残らないかもですが,当時小学生だった自分でもわかる高いレベルの駆引き,記憶には鮮やかに残ってます.

速い球,大きな本塁打,華麗な守備等,野球にはパット見で惹きつけられるシーンが沢山あって,それが野球の魅力の一つだと思ってます.いっぽうで少し時間をかけ,点ではなく線でみることで初めて見えてくるような凄さ,まさにこの牽制球の攻防がそうだと思いますが,に気付くと,面白みが数倍になるように思います.そんなシーンを小学生のうちに見ることができて幸いでした.

上にも書いた通り,試合時間改善の大きな流れがある中で,牽制球が水を刺してしまうようであれば,それはよろしく無いと思うが,東尾vs今井のような痺れる勝負が不可能になってしまうような変更も,避けてほしいと願います.