30歳過ぎから工学 vol.2

http://d.hatena.ne.jp/j130s/ から移行しました.オープンソースロボットソフトウェア技術者兼主夫. 高校・大学学部文系-->何となくソフトウェア開発業-->退職・渡米,テキサス州でシステムズ工学修士取得,しかし実装の方が楽しいと気付き縁があったロボティクス業界で再就職.現在 Texas 州内の産業用オートメーションのスタートアップに Georgia 州から遠隔勤務.

米スタートアップ企業で"左遷"された話

スタートアップ企業に就職してほぼ4年目経ちました.事業は好調で先日二回目の大型投資で40億円弱を確保,勢いづいていて言うことない感じです.一方自分はというと,過去1年半の間に開発部門のリーダー職から平になり,今回遂に心機一転を期すという名目で部署変えを言い渡されました.左遷と言うと閑職に就くイメージですが閑職を置く余裕はまったく無い中で,個人的には左遷と受け取ってますが,一方で1年半前に配置された上司との関係に苦労してきたので,その点では本当に気持ち入れ替え再出発です.クビになったわけではなく,ある意味貴重な体験です.


1年半前までは開発チームのリーダーとして,製品リリースを担い,他チームとの接点となるなど中間管理職的な役割でした https://j130s.hatenablog.com/entry/2020/01/19/161922.人事上のマネジャではないのでチームメンバの評価や色々な面倒を見ることはなかった.全社員もまだ30名程度だったのかな,まだチームや役割分けも曖昧さが多く残っていた.私がコードを書くことは自分の仕事時間の2割くらいしかなかったけれど,当時の記録をみると1ヶ月に200程度の Merge Request (GitHub でいう pull request.ソフトウェアの変更案) レヴュをしていたようです.小さい子2人の面倒を見ていることもチームに分かっていて,いつ寝てるのかと心配してもらえた一方,j130s のレヴュが終わらないと次のタスク行けない,と指さされたことも何度かありました.良くも悪くも開発チームの中枢でした.


事態が変わったのは1年半前.この頃からチーム構成・役割が良くも悪くもまともな企業化してきて,私が居るチームにもマネジャを置くことになり,唯一手を挙げた他チームの人がそのままマネジャに就きました.私が誰より一番長くいたチームだったのでマネジャ職に興味があるかは経営層から一応聞かれましたが,技術と寄り添って今後生きて行きたく,人事マネジャ職をうまくできる自信も興味もないためお断りしました.また,多分ですが経営陣も,私の議論や交渉能力が劣ると思っていたはずで,私が管理職やりたいとか言い出さなくて安堵したのではないかと思います.


この新マネジャ (仮に T 氏) とは何度かそれ以前に仕事をする機会があり,"Get things done" 仕事を前に進める力が凄いなと思っていました.一方技術に関するこだわりというかむしろ狭い視野と強い拘りにも気付いていて,私はうまく行かないタイプと既に感じていました.また私に意見を聞いてきた経営者も,T が強すぎる意見を持つ点を懸念していたようだったし,また当時 (も今も) 開発の中心にあるオープンソースフレームワークがあるのですが,私はそのフレームワークのコミュニティで名が知られており,社内でも当然頼りにされていましたが,異なる界隈出身の T はなんでしょう,肩身狭い思いをしてるのかはわかりませんが,敢えてそのフレームワークに対し"牙を剥く"ところがあったしもして,正直めんどくせえなこの人,と思ったのも事実.なので,この人の就任に対して NO と言うことも私は出来たのですが,前述のとおり目の前の問題を解決し仕事を前に進めることができるのは既に実証済みだったし,一方でリーダー役として私は自身の前に進める能力に不満があり申し訳なく思っていた所もありました.また,苦手なタイプだからこそ克服できるか興味がありました.なお T は体も縦にも横にも大きい白人で,狩りや釣り,強い酒が趣味,強い口調と勝ち気な性格,それらすべて偏見含めたいわゆる強い米国人タイプと勝手に思っています.これらを併せて,T のマネジャ就任を歓迎しました.


蓋を開けると予想以上にうまくいかなかったわけですが.何しろ技術的会話では主張が通らない.お互いが主張したい点を展開し合い,最善案や妥協点を見つけていくのが技術の議論と思いますが,私の出す案に反論する T の口調が強すぎ,どうしても怯んでしまいます.何度も試しました.自分も強く言う方法は,なぜか感情的になってしまい相手の口調に火を注ぎました.逆に物静かに冷静に話す方法は,うまく行けばはまりそうな手応えはありますが,英語自体や話の組み立て方に慣れと熟練が要りそうで,毎回うまくはいかなかった.そうこうしているうちに,いつしか技術の議論であまり参加してこない,と受け取られていることが判りました.私としては単に強すぎる口調に手を焼いていて,発言をしそびれていただけなのですが,発言が少ない --> 技術・設計論に関心がない,と勘違いされたか,或いは技術に対する考えの違いに嫌気がさしたのか,とにかく彼主催の設計ミーテイングに段々と招かれなくなり,また他メンバへの助言役として名指しされなくなっていきました.そうなるまでに半年とかからなかったか.


頼りにされなくなると,T が回してくるタスクがどうも優先度・重要度が低そうな作業が多くなりました.なお公平のために書くと,私は小さい子2人の面倒を見,突然仕事を休くこともたまにありました.たまに,というのは2020年は covid で,マスク着用等の学校の努力のおかげもあり子らが奇跡的に健康だったので,子らの体調を理由に仕事を休むことは月に2日も無かったはず (2020年より前はもっと頻繁だった).でも勢いあるスタートアップ,締切の要件は厳しくなる一方で,時間の融通の効く若手社員への依存が一気に増えた時期のように思います.そんなわけで重要度が低い作業が多くなり,マネジャと頻繁にやり取りするのを何故か申し訳なく思い,また個人的に好かないこともあり,密な連絡を怠りました.これが決定的にまずかった.結果として,締め切りについて誤解が起きまくり,j130s は仕事が遅すぎるという印象を持たれました.私の主張は,締め切りの共通認識が無かったということですが,にしても私から明確にしてもらうよう要求すべきだった.


といった顛末で,もう T のチームに居るのはつらすぎると思い始めて数ヶ月たち,いっぽう私生活では3人目の子を授かり (!),育児のため時短勤務中です.そこへ来て配置転換の指示.新たなチームは,品質関連なので,software engineer として張ってきた身としては,微妙です (私は品質部門の作業自動化に興味がありますが,software engineer 特にデキる人達の中に品質部門を蔑む人達がいるのも見てきたので).少なくとも,使えない奴と現マネジャに判を押されて望んでなかった部門に移されるという意味では,左遷なのかなと.
品質部門のリーダとは息を合わせて仕事してこれたと思っているし (白人,超長い髭で,最初こえーと思ったんですが,その実すごい堅実で品質部門向きな人だった),書いたように自動化で楽しめる部分はありそう.品証の心構えぜんぜん無いですが,まあやってみます.