30歳過ぎから工学 vol.2

http://d.hatena.ne.jp/j130s/ から移行しました.オープンソースロボットソフトウェア技術者兼主夫. 高校・大学学部文系-->何となくソフトウェア開発業-->退職・渡米,テキサス州でシステムズ工学修士取得,しかし実装の方が楽しいと気付き縁があったロボティクス業界で再就職.現在 Texas 州内の産業用オートメーションのスタートアップに Georgia 州から遠隔勤務.

個人私用の主 Email アドレスの寿命.生涯アドレスという夢

主な個人 Email アドレスとして,私は20年以上同じアドレスを使ってきました.学部を卒業した慶應義塾の卒業生転送専用アドレスです *1ここ (jukuin.keio.ac.jp) で取得できたはずのアドレスで,"アカウント名@卒業年.jukuin.keio.ac.jp" というように,かなり長くなりますが,きちっとした構造好きの私としては悪くなかったです.
しかし,私事ながらサイバー絡みの攻撃の被害を被ってしまったことで,自分のサイバーセキュリティの知識を更新してる最中で (ソフトウェア/ロボティクス関連の技師として20年以上経ちますが,サイバーセキュリティは体系的に学んだことがなかった),家族全体への備えを同時に行いつつ有ります.その一環で個人 Email アドレスも見直しです.

そもそものきっかけはセキュリティ見直し段階より前でした.今回攻撃を受けてる際に,支援して頂く,頼みの綱である当局との Email のやり取りが悪者共に傍受されたらそれこそシャレにならない,と危機感を持ったのが初めでした.

その後少し学び (結果は hut_10sqft#679 で記録・公開中),Email でよく使われるセキュリティ機能 (TLS, S/MIME) があるのが分かりましたが,前述の慶応の卒業生アドレス運営部門に聞いた所それらは対応していなさそうです.また,将来使えるようにする予定も無さそうな雰囲気に思いました.慶應自前のサービスなら外に払うライセンスみたいな費用はないでしょうが,利用者数が多くないんだろうと想像すると,機能追加などの継続運用業務のモチベーションは無いんだろうなー,と.

ネットワークの専門でないですが,誤解恐れず言うと,TLS (通信経路暗号化の機能の1つ) が無いと,自分の Email 送信元サーバと相手のサーバの間の通信が傍受されたら,Email の中身読まれるかも,S/MIME (メッセージそのものの暗号化機能の1つ) がないとサーバ/コンピュータ上に保管された Email データにアクセスさえできれば中身を読まれるかも,という状態かと思います.公のネットワーク上での通信傍受がハッカー *2 にとってどれだけ簡単に行えるのかは分かりませんが.

同じ住所に生涯住み続ける,ということは実際かなり難しそうと思ってます.40歳後半の今でも,数多くの場所にとは言わないまでも,まだ幾つかの地を経験しても悪くないかなと思うし,何より家族の意向/事情があったら考慮せざるを得ない.
一方,Email が今後ずっと続いていくのかは分かりませんが,アプリケーション固有のフォーマットを持たない汎用的な仕様を各サービス事業者が運用している,インターネット上で稀有な部類のメッセージング機能と言って良い気がしており *3,ネット上の個人 ID としての暗黙的な役割も含め,永く続くのでは,と素人目ながら思っています.

同じ Email アドレスを生涯使えればなあ,というのは,ちっぽけな自分の浪漫として持ってました.160年以上続いている慶應義塾なら私が死ぬまでも安泰でしょうから,GoogleFacebook が今後何年続くのかを懸念する心配もなく,生涯 Email アドレスという期待をかけたいと思っていましたが.が,今回わかった慶応のサービスのセキュリティの不足は,ちょっと目を瞑れないレベルです.こうして公開記事にすることで,もし詳しい方から入れ知恵頂き,jukuin アドレスでも大丈夫,考え直すというのをひそかに期待もしてますが,そんなことが起こらなければ,残念ですが,他に乗り換えます.

*1:なお慶應義塾は,別枠で卒業生も使える GMail ベースの keio.jp というサービスを運営しているようで,そちらならセキュリティ機能は常に更新されてそうですが,どうも最近の卒業生じゃないと使えないらしい?

*2:日本の技師達は,悪意を持たないサイバー空間での深堀を行う人をハッカーと呼び,悪意を持ってそれらを行う人をクラッカーと呼んで分けたりすることがありますが,英語だと後者は遥かに一般的な文脈で使われ,しかもたぶん放禁レベルです.英語ではハッカーと呼んじゃってます.でも hack/ハックは日本と同じ意味で使う.ややこしいです.

*3:数多存在するメッセージング・サービスの多くはアプリケーション固有のフォーマットになっている,従って事業者のサービス終了時に過去のメッセージもすべて消失,という仮定