30歳過ぎから工学 vol.2

http://d.hatena.ne.jp/j130s/ から移行しました.オープンソースロボットソフトウェア技術者兼主夫. 高校・大学学部文系-->何となくソフトウェア開発業-->退職・渡米,テキサス州でシステムズ工学修士取得,しかし実装の方が楽しいと気付き縁があったロボティクス業界で再就職.現在 Texas 州内の産業用オートメーションのスタートアップに Georgia 州から遠隔勤務.

Darvish 初登板観戦なるか? + アメリカの野球場の飯

突然視界が開けるかのように力学 (Advanced Dynamics) の授業が解るようになってきました.教科書の練習問題を読みまくったら,そこまで難しい話はしてなくて,手順が多いだけじゃんと思うようになってきた.先週から週末も含め殆どこれしかやってないので嬉しい.私は slow learner,専門外なら尚更時間がかかるのはある程度は仕方ない.
さてアメリカも野球が開幕間近,ダルビッシュ投手の初登板が噂される 4 月 8 日,あるいは 9 日両方チケットは押さえました.8 日の White Sox 戦の登板となれば全国中継されるので注目度が上がります.一方 9 日なら Seattle Mariners 戦なのでイチロー + 一軍での開幕が報じられたばかりの川崎宗リンとの対戦が見られるという日本人的に最高の展開.
私的には,9 日は月曜のナイトゲームなので力学の授業とかぶってしまいます.当初は授業一回くらい授業をさぼっても良いかなーと思ってたけど,ここにきてやっと授業内容への理解が追い付いてきたというノリを優先し,授業に行くことにしました.ということで,日曜に投げて欲しいなー.



ちなみに地元紙によると,本拠地 Rangers Ballpark in Arlington でのダル投手登板日にはアジア料理の販売が検討されてるとのこと.過去にも,うどんや炊いたご飯等が実験的に売られた事があったものの振るわず,すぐにテキーラの屋台に変わったそうです (他の食事に変わるならともかく,酒かよテキサス).
私は MLB の野球と NBA 合わせてこれまで十回程度現場で観戦してますが,球場のお客さんって大多数をラティーノ *1 が占める.人口の 7 割をラティーノが占める Miami でバスケを見た時には全観客の 9 割程度がスペイン語を喋ってたのにはたいそう驚きましたが,マイアミでなくともテキサス等アメリカの南の方はラテン系が多いのである程度そうなるのは自然.スポーツ観戦大好きな人種のようですね.一方,文化的に挑戦する人々という印象は私は彼らに対してあまり持ってないので,アジア料理が売れないのも当然かなと.
そういうわけでダル登板日のアジアンメニュー企画も商業的には失敗すると予想.私個人的にはアメリカンな料理に抵抗は無く,むしろ普段食べないようなチーズステーキとかを球場行った時食べるのが楽しみだし,映画にはポップコーン,野球には BBQ/ハッドッグというアメリカなりの様式美も好きなのだが,抵抗ある日本人がいるのも解る (ダルビッシュ投手も飯の合わなさを匂わせている様子) し,続けて欲しいですけども.

と言っておきながら Miami Heat の本拠地では辛めのタイ風チキンヌードルが売っていた (中身みえなくてスマソ).辛い + 肉,というのがラティーノにとって大事.

*1:"ヒスパニック" という呼称は最近 politically correct でなくなってきていて,ラティーノの方が一般的.

円運動する物体は内側と外側の速度が違う?

大学院レベルの力学の授業 (Advanced Dynamics) に付いて行くのが大変です.自分の専攻ではない機械工学科の授業ですが,ロボティクスを理解する上で基礎になるので,頑張って履修してみてます.教科書や授業の録音を何度聞いてもわからず,ネットで日本語ページを読んだりもしてます.力学系は基礎が欠けてるので,何が解ってないのか,何は解る必要が無いのかを切り分けるのも大変...
ところで,自分用メモに過ぎませんが,授業内容とは直接関係ないけれどもこのページに全然理解出来ないこんな記述が.


CDはレコード盤と違い線速度が一定ですから、常に等速だとするとディスクの外側に行くほど回転が遅くなります。
等速だとなぜディスクの外側の回転が遅くなるのか????いくら力学ではまだ知らんことが多いとはいえ,円運動する物体の内側と外側の速度が違うという話はこれまで私は聞いたことがないので混乱.
調べたところどうやらここに書いてある話と理解しました.上の記述は,円運動一般の話ではなく,ディスク読み込み装置に特化した話.で,外側が "回転が遅くなる" のではなく,"一周あたりの読込みにかかる時間が長くなる" ということかなと.ふーびっくりした.そしてディスクってそうなってるんですね.

全然話変わりますが短い春休みでフロリダ行ってきました.ストーンクラブという名産のカニ.ほじるのが面倒なのでカニは特に好きじゃないのですが,このカニはすっぽり抜けるので面倒があまりなく食べやすいし,味も美味しいと思った.多分いわゆる大味というやつなんだろうけど,そのせいかバター等油系のソースが合います.ハサミが身に比べ大きいらしく,身を食べることは少ないらしい.漁獲時に片方のハサミだけ取ってまた海に還すのだそうな.いかにハサミが身に比べて大きいかは,下のスティーヴ・ジョブズ (故) 似のチョイワル漁師さんの写真参照.

MOOC - 数万人が同時履修する無料の (世界トップ級) 授業

例によって試験期間に限ってブログ書きたくなる病が発症しました.休憩で 20 分で書いてみる!
タイトルはシンセサイザーの名前ではありません.先月,いま通っている学校 (Dallas の SMU) の遠隔授業について書きましたが,世の中的に遠隔授業に関して大きな取組みが出てきました.今後利用するのが当たり前になって,やらないと置いて行かれたりすらするかもしれません.
昨 2011 年秋には人工知能学の世界的な研究者二人が二ヶ月程度に渡る無料クラスを開き,世界 190 カ国から 15 万人以上が登録しました (内約 2 万人が修了とのこと) が,この春はその時の講師の一人らが中心となって複数のクラスが開講されています.このオンラインシステム利用による大量履修の流れは 3月5日付の New York Times において MOOC (Massive Open Online Courses) と呼ばれてるらしい.
一般論は上の記事を参照していただくとして,私もこの春受講中である Programming A Robotic Car (担当は Stanford 大学終身教授の職を辞して Google 社の自律移動車研究チームリーダーになった Sebastian Thrun 博士) というクラスの,これまでの二週間の経験からいうと,とにかく内容のレベルが高い.世界中の受講者が活発にオンラインで議論している,運営側のサポートもリアルタイム,とまあ一学習者として良い事が多い.何より録画のメリットの基本中の基本である "わからんとこは繰り返し見るベシ" は当然可能だし,とにかく前回のブログで問題に挙げた ”学習経験の質” を上げることに重きが置かれているのがわかります.毎週授業と宿題があり,私は各週とも 15 時間程度費やしました (大学院の授業一個あたりも週あたり 10 - 30 時間使うのは通常かと).
これほど高い学習の質がオンラインかつ無料!!で保たれてしまうと,気になるのは ”学校で (お金払って) 学ぶのと差はなんなのか” です.
留学に限らず,大学院に通って学ぶこと関しこれまで私が見聞きしてきたアドバンテージは,"ネットワーク","級友や研究者との議論","地理/組織に依存する活動に参加する機会" でした.必ずしも "(座学/教科書ベースのの) 授業" が最大のメリットではない,という点は私も強く同意するところです (座学ならある程度独学で補うことすらできる).勿論,基礎/応用の知識を身につけないと人との会話も研究プロジェクトの作業もままならず,座学の必要性にまったく変わりはないのだが,わざわざ組織にコミットすることの意義として最優先でもないと思う.あとはもしある分野で一流と考えられる学校の卒業であれば更に ”箔” という付加価値も付くわけで,学校に通うことのメリットはなんら失われない.しかしながら,では必ずしも最大のメリットたり得ない座学の部分を,現地に行かなくても体験できる = オンラインでやってしまおう,という発想は学校に通う立場からしても馴染みやすい.
見逃せないのは,この記事中にある授業運営会社 (Udacity 社) は,生徒の成績を就活時に就職先に提供するのも検討してるとのこと.学位や修了証が発給されない分,これは就活が視野にある人にとって,極めて大きな Incentive になります.アメリカの就活では客観的に能力を証明することが求められる傾向が強いので.
一方教える側にもメリットがあるらしい.上述の Thrun 博士は,Stanford の教室で 20 名の顔を見ながら講義していたのが,誰の顔も見えないがオンラインで数万人に教えることができた,教室にはもう戻れない,と興奮を語っています.
大学で授業を受け持つこと自体の労力はかなりのものだと思います.オンラインならではの労苦もあるでしょうが*1,大量に数をさばくための仕組みも運営会社によって考えられているし (例えばプログラミング課題すら提出可能),何より意識が高い運営会社に色々まかせられそうだし,このほうが比較的何から何まで自分でやらねばならない大学院での授業担当より楽なのでは?とか推測.
この分野の収益構造が今後どうなっていくのでしょうか.Udacity はエンジェルの,同種のサービスを以前から展開している khanacademy.orgGoogle からの投資の他ビルゲイツ財団をはじめとしたドネーションによって運営されているようですが,当然投資や献金では産業として拡大しないので,収支が安定する仕組みが模索されている最中かと思います.授業の種類が充実していけば,上述した成績提供の仕組みと併せ,特定のスキルを持つ人材がほしい企業からの運営事業者に対する投資が増えていったりするでしょう.
成績を企業に提供する仕組みが整うと,たとえば,それこそ今私が履修してるような自律移動技術みたいな,かなりニッチなスキルも,一定の質を保った技術者を照会・マッチングし易くなる,というのは想像がつきます.しかも受講者は全世界に散らばっているわけで,うまくやればスキルを持つ人材のデータベースを,現地オフィスを持たずして世界展開することも可能.一大 Job Agency の誕生ですね.
高度な内容を,教わる側も教えられる側も低コストでサクサク進められるこの仕組み.授業料高騰が問題になっている米国でなくとも,無料で高品質はウレシイ限り.そのうち当たり前になっていくのかな.日本からも世界に向けて発信される日が来るんでしょうね.
結局 40 分かかってしまった.

スフレを初めて食べました.食感がおもしろいし低カロリー.はまる.

*1:ちなみに履修者を退屈させない授業の仕組みも魅力の一つ.一回の授業は,数分程度のごく短い動画が数十個集まっていて,各動画ごとにクイズで理解を確認していく.サクサク感の高さは,陳腐な言い方だけど,シリコンバレー発ならでは.あと,Programming A Robotic Car の授業に関して言うと,確率を多用するロボティクスの理論と,それを Python で実装するという大きく二つの構成なのだが,プログラム書いて流れを体感させた後に数式の説明をするなど,個人的には理解がしやすい構成になっている.Bayes 理論の公式の意味が初めて腑に落ちました.

米国だって詰め込み教育

春学期始まってまだ一ヶ月なのに厳しい毎日です.授業,個人的な勉強,就活...息抜きにブログ.
よく ”日本人は”*1日本の教育を批判する際に ”詰め込み” 型の是非を話題にするけれども,少なくとも米国の高等教育は ”詰め込み” 型に結構近い.というか自分がいる工学系や,科学系で親しい米国人の様子をみる限り,これら分野ではまずは詰めまくってるように思う.詰め込まないと/基礎を付けないと,深い話にはならないし,応用とか言ってみても浅いものしか出てこないかあるいは ”感性” に訴える的な所にしかいけない (感性を評価基準として扱うのは今日の科学/工学では簡単ではないと思う).そして想像/創造力を養うというのは,基本を習得した上で別な所でやられているように見える.
詰め込み教育の弊害として言われるのは Wikipedia 曰く ”試験終わればすぐ忘れる”,”過競争から生じる格差,精神的なトラブル” 等らしいが,それらはアメリカでもまったく同じことは起こっている.この国では経済的・身分的な格差が日本とは比べられないほどに際立っているが,一方で多くの分野で世界の学界をリードするという自負と現状があり,じゃんじゃん勉強して知識を詰め込み,それを活かして創造性を発揮して○○や■■し,おまけにトップ校の学費も上昇,という風潮が止む気配は無い.世界はこういう流れなので,良い悪いの評価をゆっくりやってる場合ではない気がします.最近で言うと東大の入学時期変更の問題は,社会的影響が大きいので一大事なのはわかるけれども,そう踏み切った東大の問題意識の根幹は何なのかにもっと焦点が当たるべきじゃないのか.

愛猫達がたまに一緒に寝るようになりました.下の子 (白い方,ノビ) の延びた脚がウケる.

*1:日本人は,というのが重要.日本人は日本に対する自虐が大好きなのが一つの理由.もう一つは,しょせん私も留学四年目,日本以外をそこまで深くは知らないので.

ロボットの軍事利用に異を唱えてる人に異を唱える

混乱を招くタイトルですが,私はロボットの軍事利用に賛成なわけじゃありません.ある人達の主張が意味を為さないのでそれを指摘したいだけです.
日本の某ラジオ局のコラムで,ロボット技術を利用した米軍の UAV (無人飛行機) の問題点を取り上げていた.曰く,米軍では無人機が急増しており,偵察機だけでなく攻撃を行う機体も増えていく,遠隔で殺人ができてしまうのは操縦側 (米軍側) の人の心理にも悪い影響がありそうだし,例え同じ殺傷でも,遠隔でやるのは人道的ではないのではないか,という内容のように思います (番組はここで聞けます).
新しい兵器が現れた時に議論をする事には賛成です.しかしながら,このラジオ番組で問題として取り上げられていた事柄は,新規の問題ではなく,むしろ的外れに感じた.私の軍事の知識不足という点を差し引いても,論理展開に納得がいかず,したがって主張が意味を成していると感じられない.以下,番組が問題にした二点と,それに対する私の意見:
番組内の主張-1.UAV を用いた遠隔攻撃は,人の心理に悪影響仕事としてオフィスに行き,UAV を操縦して遠隔地からバーチャルに殺傷を行い,仕事の後はふつうに家や兵舎に帰る,というようなライフスタイルは兵士の心理に異変を来しかねない.また,攻撃対象の人達に対しても,人道的では無い,とのこと.
UAV での攻撃は,同じく遠隔で標的を攻撃できるミサイルと何が違うだろう?という点を明らかにしていない.相手に被害を,自爆することで与えるか他の手段を使うか,というのがミサイルと UAV 攻撃機との攻撃法の違いであり,ここで議論している遠隔攻撃という意味においてはそう違いがない.ミサイル発射ボタンを押したり制御に携わる人はここ何十年も居る.別に UAV で攻撃するようになったからといって兵士の心理的にそんなに新しい事があるのだろうか.遠隔攻撃を問題とするのであれば,ミサイルを使った攻撃から問い直さないとおかしいと思う.
また,最後の "相手に対して失礼" 的な話はちょっと驚いた..武力紛争のやり方はジュネーヴ条約で一定のルールが定まってますが,戦闘員への攻撃に関しても何か決まってるのかどうかちょっと不勉強で知りません.しかし,少なくともミサイルはバンバン撃ってますよね?

番組内の主張-2.ロボットは兵器利用しちゃだめロボットは平和利用すべき.以上.まる.その意見をもっと日本から世界に向けて発信すべき,なんだそうだ.そしてその根拠はというと,古典的な Isaac Asimovロボット三原則だそうで.
まずマイクロな話からすると,アシモフロボット三原則は自律して動作する (人の操縦を介さない) ロボットにしか適用しないはずなので,遠隔とはいえ人が操縦する UAV に用いるのは議論の余地が大きい.したがってこの時点で既に番組のコメンテータの主張は根拠が揺らいでしまってる.
もうちょっとマクロな話は,たまたま今回ラジオはロボットの兵器利用を批判してるわけだが,兵器ってシロモノは広い範囲の技術の集合体である点はどうなのか.他の技術にはコメントしないで*1,なぜロボット技術だけ槍玉に上げるのか.上記の通りアシモフを引っ張ってくるのは意味が通らないし,そもそも彼らが考える "ロボット" って何なのかすらも怪しく感じてしまう.
こういう筋があやふやな話が日本人から湧いてしまうのは,無条件で攻撃用兵器イコールいけないもの,という意識が強い日本ならではなのかなとも思う.同じ日本人として感情的にはいたしかたないとも思えるのだが,今回のように日本の論理を以って,異なる防衛事情を持つ国の方針を批判しても,議論が成り立たない.
このコメンテータは面白い風貌だしいい事言う人なのかなとなんとなくずっと思ってたけど,今回は,情報としては勉強になったが,主張にいたる論理に上記のとおり素人でも気付く穴があるし,主張そのものがなんじゃそりゃ!だったので,残念.
先にも書いた通り,兵器ってものに対して問題提起したい気持ちはわかるし,議論をすることはいいことだと思う.ただ,論理的に通らない主張は受け手を間違った方向に導くだけで,特にことがロボットに絡められてしまってたので,一筆書かずにおれませんでした.

*1:今までの放送は聞いてませんが,少なくとも今回の放送内で,"これまで一貫して技術の兵器利用に反対してきている" という風には聞こえない.

遠隔授業で学位の質を保つのは難しそう.そして録画は In-class でもアクセスできるべき

いま在籍している大学院プログラムは授業がすべて遠隔で履修できます.授業がすべて録画され,教員のコンピュータの画面も,手元の板書も録画される.生徒の座席にはマイクも付いているため,リアルタイムでない以外は一応教室で受講するのと変わりない内容を視聴できる.
宿題はオンラインで提出できるものに限られます.試験は監督官をできる人 (職場の上司や近隣の図書館の司書さん等) を指定し,その人が監督,回収,スキャンして学校に返送する形で行うことが可能.この性質の為おそらく高品質なコンテンツ (三次元モデリング等) を扱う機械工学等ではすべてを遠隔で履修するのは不可能らしい (勿論そういう授業を履修しなければ可能).
この方式のお陰で登校できない学生も大量に在籍することができ,私のいる Systems Engineering プログラムでは,通常教室に行っても数人〜20人程度しか居ないのに,受講者全体は数十人いることが多いです.去年はグループ課題で一緒になったクラスメートが中東のバーレーンに駐在している米軍オフィサーだったりもしました.



個人的には録画は,理解出来ない箇所を後で確認できるのでとてもありがたい一方,録画視聴中に気合を保つのは難しい ("質問して,good question と教員に言われよう" というのが授業中のモチベーションの一つなので).そして試験官制度も,忙しい上司が試験を厳しく監督してくれる場合はおそらく多くないと推察します.ただ経験から言うと,フルタイムで働きつつ遠隔で受講しているクラスメートでも,いつ作業してるんだ?と驚く程の質の高いアウトプットをグループワークに出してくる学生も少なくないのだが,それでも総合して考えると,学位の質を保つのには必ずしも貢献していないと思う.ただ,履修者数は飛躍的に増えるので,学校の収支としてはドル箱なはず.私立大学だからこういう策は仕方が無いのでしょうが,ちょっと残念です.
そして自分の問題として非常に残念なのが,録画は遠隔履修者しか閲覧できないこと.教室で受講する (In-class) か遠隔にするかは,履修するクラスごとに生徒が決められるのですが,遠隔だと技術料で一クラスあたり $600 ほど学費が高くなる分,In-class の人は録画が見られない.そこで録画を見たいのならば,すべてのクラスを遠隔履修すれば良いのですが,学校のルールか政府のルールか忘れましたが留学生の決まりで遠隔履修できる数が制限されている (In-class 2 に対し遠隔 1 の割合とかなんとか).
上述の通り,学習のことを考えると教室の受講以外に録画を見直せるというのは大きいし,意識の高い学生なら何度か授業を見返すことを厭わない.じっさい,近隣の医科大学では,公立にも関わらずすべての在学生に録画を公開していて,技術料を上積みされてるのか不明ですが,生徒のよりよい学習経験のために学校が努力をしているように感じる.私の学校の場合,学習経験のためということ以上に,金儲けなのでは?と感じざるを得ない.ましてやインターネット上に広く録画を公開しちゃってる MIT や Stanford 等とは雲泥の差 (色々な意味でそこら辺と比べるのはアレだが).
学費の差は"たかだか" $600 なんだから,すこーしくらい上げても良いからけちらずに全録画を公開するようにして欲しい.遠隔配信運営チームにはそう意見し,Director から意見ありがとうとは返信をもらったけれど,運営担当の彼らから上層に意見が行くかどうかは怪しいし,私もそうはいってももう卒業だし,なんだかなあと.

最高の田舎そば @ 小代行川庵 in 日光市.田舎そばとは行っても江戸前のすっきりした二八.

2012 春学期のお勉強項目

五月に修士を卒業する旨を学校に提出しました.色々要件がある博士課程と違い修士のそれは,所定の紙に,卒業証書に記載して欲しい氏名 (自分で指定できるのね.米国で使っている自作 Middlename を躊躇せず指定した) や Honor (名誉学位?) 等を書いて提出しました.SMU Systems Engineering 修士課程の卒業要件は,30 単位を取得 (そのうち 15 単位は必修授業,残り 15 単位は選択で,工学部の大学院レベルであればどの授業でも OK) することのみ.研究系というよりプロフェッショナル系学位なので修士論文もありません.
私は既に 24 単位取得済みなので,この春学期は 6 単位 (二クラス) とかなり楽.その分授業以外でやることが多いのだが,授業も自分にとっては挑戦的な次のものを履修しています.

  • ME7320 Intermediate Dynamics By Dr. Edmond Richer (中級動力学 from 機械工学科) ... 名前から明らかな通り動力学の続編.二年前に初級編を履修し,試験でかなり苦労はしましたが,習ったコンセプトはその後のロボットのシステム開発でかなり役に立ったため,今後の開発のために一歩踏み込んで学ぶことにしました.初級編では二次元のみ扱ったのが今回は三次元になり,考慮する制約条件も増えるらしい.周りは当然機械工学の学生だし,かなり勉強しないとあっという間に落ちこぼれそう.
  • CSE7320 Artificial Intelligence By Dr. Michaela Iridon (人工知能論 from 計算機科学/工学科) ... 三学期前にとったデータマイニングに引続き,日本の学部時代にも履修した授業を再び (恥).しかし,日本時代は何も勉強しなかったという反省から今留学に至るわけで,良しとします.これも昨今のロボティクスの開発ではアルゴリズム理解は欠かせないための処置.教科書は昨秋ネットで無料開講・Stanford 大から認定証も出るってことで話題になった AI Class の為に買い,結局時間がなく履修を諦めたために未使用になってる下記の本なこともあってお手軽.授業内容は幾つかのトピックを集中的に学んだ AI Class と異なり,幅広く浅く学ぶらしい.担当教員はグラフ理論をやってる方で,初日からヘビーなクイズがあって中々勉強させてくれそうな雰囲気は嬉しいが,プログラミング言語C# が好き,というのがちょっと引っかかる.

Artificial Intelligence: A Modern Approach: International Edition

Artificial Intelligence: A Modern Approach: International Edition

この他に学校外のお勉強項目として以下の二つ:

  • 上に書いた AI Class を,認定証は出ないもののコンテンツはまだ視聴できるので,この際にしっかり受講し直しておきたい.昨秋は,インターンとは言えフルタイム勤務で,仕事に没頭していたこともあり,仕事外でヘビーな授業を一個と言えども履修するのはキツカッた.学生であるこの春の機会を逃すと今後いつできるかわからないようなことは今学期できるたけやりたい,そして AI Class はその内の一つ.授業担当者の一人は自律走行自動車で著名な Dr. Sebastian Thrun で,環境の不確定要素に対し確率を用いて意思決定する "Probability Robotics" という分野を引っ張っていることでも知られている.その為か授業のトピックも Planning/計画法や画像処理といったロボットによく使われるネタが中心に扱われる為,私がこの授業を受けずにおくは無い.
  • Control/制御工学を下記の本で学ぶ.Robotics の教科書なのだが,制御の大家が書いており自分にとってちょうど良い.制御工学の定義すら今日の私はここに書けない状態ですが.ちなみに著者の Mark Spong は近所のテキサス大学ダラス校の工学部長をしておられます.また,共著のインド人の先生はこないだ質問を畏れ多くもメイルしたら Skype で相談に乗って下さった.お偉い先生がこんなにも気さく・フレキシブルだと面食らうけども,時代の流れに置いてかれないよう何とか頑張ります.

Robot Modeling and Control

Robot Modeling and Control

というわけでわかるように,今期の勉強はばりばりロボット工学向けで,システムズエンジニアリング (SE) は含みません.後で別途書かねばならないのですが,SE の座学は実務を伴わないとイメージが沸かず,現業を持っていない・前職から時間が経ちすぎていることもあり,advanced な内容になる選択科目を SE で受けるには理解が難しく,必修科目だけで十分と判断しました.むしろ今後の仕事人生はロボティクスで行きたく,欠けている基礎を補うことに今期は概ね集中します.

関係ないが日本の実家にいるときに食べたざるそば.近所の大工の棟梁の手打ち・そば粉 100%.100 だけあってぶつぶつ切れるが旨い.二八蕎麦とは違う男くささ.