30歳過ぎから工学 vol.2

http://d.hatena.ne.jp/j130s/ から移行しました.オープンソースロボットソフトウェア技術者兼主夫. 高校・大学学部文系-->何となくソフトウェア開発業-->退職・渡米,テキサス州でシステムズ工学修士取得,しかし実装の方が楽しいと気付き縁があったロボティクス業界で再就職.現在 Texas 州内の産業用オートメーションのスタートアップに Georgia 州から遠隔勤務.

ロボットと災害救助

2012 年もあと数日で終わるというのに一向に実感がないです.先日も書いた通り,勤務先でソフトウェアのリリースを年内を目指しており,年内一杯は出勤 --> 午前様なので (というかアメリカはもともと年末年始は働く人も多いようですが).
その 2012 年ですが,ロボット研究業界では一つ大きな出来事として,米国防総省の研究機関が日本円にして総額数百億円を研究者に分配するプロジェクト "DARPA Robotics Challenge" を開始しました.テーマは災害現場で役立つロボットの開発であり,背景としてハリケーンカトリーナ,メキシコ湾の油田事故や一番直近の福島第一原発事故など,大災害でロボットが重要な役割を果たした事が挙げられています.
この度,災害現場でのロボットの活用を推進している米テキサス A&M 大学のロビン・マーフィ教授が,日本の政府機関に災害ロボットに関し提言を行ったようです.彼女自身,東日本大震災が起きて以降何度もロボットを引き連れて被災地を訪れており,頭が下がります.私の第二の故郷テキサス州の先生ということもあって,個人的に応援している先生でもあります.このニュースが日本語の記事になっていないようで,日本が強く関係しているのに日本人の目にまったく入らないのは残念なので,このリンク先に翻訳を試みました

*1
ロビン・マーフィ教授

(ニュース記事の全文和訳) 災害救助ロボットの権威が日本政府に提言

原文 http://www.cs.tamu.edu/news/items?id=3172
あるいは http://crasar.org/2012/12/19/murphy-offers-suggestions-to-japanese-government-for-faster-international-deployments-of-rescue-robots-press-release/

マーフィ博士が日本政府に,災害救助 "レスキュー" ロボットの迅速な国際展開について提言

レスキューロボット分野のロビン・マーフィ博士が 12 月 11 日,NEDO (独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) と懇談しました.

マーフィ博士は テキサス A&M 実験施設 (TEES) 内に設置された the Center for Robot-Assisted Search and Rescue (CRASAR) の所長であり,テキサス A&M 大学計算機科学科で Raytheon 教授も務めています.

NEDO は日本の産業の競争力向上を支援する新しい組織で,レスキューロボットの国際チームを組織することを検討中です.マーフィ博士は,(New York の) 世界貿易センタービル崩壊やハリケーン・チャーリーやカトリーナ福島第一原発事故などを含む 15 箇所のロボット派遣任務のリーダーを務めた経験を踏まえた知見を提供しました.

"人命救助が効果的なのは最初の 3 日間ですが,ロボットが配置されるのは災害発生から平均して 4 日経った後であり,役目を果たすには遅過ぎるのです" とマーフィ博士.

福島第一原発の例では,日米の適切な機能をもつロボット達は既に日本に集められ,すぐにでも使える状態だったものの,情報不足やロボットへの信頼の欠如など色々な理由により,最初の飛行/地上ロボットが使われたのは発生から 1 ヶ月後でした.

障壁は資金ではなかったとマーフィ博士は言います.彼女が指揮する CRASAR の Roboticists Without Borders program (国境なきロボット研究家団) には,幾つもの企業が常に無償で,ロボットと専門家を災害救助に提供してくれるからです.

マーフィ博士の提言は 3 つでした.はじめに米国と日本は,レスキューロボットの理解を促進し迅速なロボット展開を可能にするため,国家間や組織間のネットワークを構築するよう協力すること.2 つ目に,人員の移動/物流,トレーニングやロボットの整備など必要な準備のための資金を政府同士が確保すること.3 つ目にロボティクス産業や研究コミュニティが継続して改良できるよう知見をフィードバックできる仕組みを構築すること.詳細は CRASAR のウェブサイトをご覧下さい.www.crasar.orgCRASAR

TEES はテキサス州の工学研究機関で,テキサス A&M 大学システムの一部です.

クリスマスイヴ,リリース目前

クリスマスですね.米国滞在初となる母と,姉と,GF と短い休暇をのんびり過ごしました/過ごしてます.今晩は Stanford 大学の教会で (カソリックだが訂正; Wikipedia によると non-denominational な様子.) イヴ礼拝にいってみます.
職場もほぼ全員休暇ですがに来てみたら結構人が働いてるし (イヴは休日ではない),メールは活発にやり取りされてます.というのもオープンソースで運営しているソフトウェアの次期バージョンの近日中のリリースを目指しているため.全米中の家族のもとに帰っていったメンバー達も時間をみつけては仕事しているらしい.私も今日明日は午前仕事,午後は家族と過ごします.ブログ書いてる場合じゃないね!メリークリスマス!

休暇で行った Napa の Silverido Vineyard.ワイン好きじゃないんだけどワイン樽の甘い匂いは大好きだということが分かりました.

新仕事.労働環境にアガる

さて California に帰って来てまた短期ですが仕事始まりました.新しい企業で仕事する事自体はこの 1.5 年間で 3 度目なので,勝手がわからないことによる初日のどきどきは少なかった.しかし今回はこれまでの 2 社と違い世界的大企業ではないのでちがう部分があるかな…,という不安はありましたが,果たして始まってみたら本当に良い意味で違いすぎて驚いてます.というか,いかにも "イメージ通りのシリコンバレー企業" キタ━と叫ばずに居られない感じ (実際には叫んでないが).とにかくぶっ飛んでる.
一週間という,深い観察も何もあったもんじゃない期間の範囲で見聞きした中で,自分的に驚くのは (順不同):

  • 短パンで仕事してる人がいる
  • 帽子/ハット被りながら仕事してる人がいる.ビーサン,裸足,ヘッドフォンかけながら歩いてる人もいる
  • 全員,デスクが電動で上下に高さを変えられる.起立して仕事してる人もいる.
  • 起立してるだけじゃなく,トレッドミルをデスクの下に置いて,歩きながら仕事してる人もいる
  • マネジャーでも,オフィス内をキックボードですい〜っと移動している (逆にマネジャーしかやってない?)
  • 週二回,bootcamp が朝っぱらからある (任意参加)
  • 短期雇用者向けに,徒歩三分の場所に一軒家が数棟借りてあり,格安で入居可能.
  • その一軒家,テクノロジー系企業の社員の仮宿なのに,インターネットが超遅い (インターネット使いたきゃオフィス行け --> オフィス来たら仕事しますよね?という創業者会長の狙いらしい)
  • 短期雇用者でも 24/7 自由にオフィスに出入りできる (これまでの 2 つの大企業では,朝も夜も時間制限があった)
  • 真夜中/土日でも人がけっこう居る.
  • 廊下を突然大人よりデカいロボットがシャーシャー言いながら歩き去っていく (誰かの実験の一部)
  • 専属シェフが何人もいる.平日は朝昼晩,三食無料.しかも美味い. (again, オフィス快適にしてあげるから仕事しますよね?論理).
  • 金曜は 5 時からビールパーティ.そのままボードゲーム大会に突入.日本で言えばオフィスが雀荘化するようなもの?
  • (11/8/12 追記) TOTO ウォシュレットも発見!

先週一週間のランチはこんなでした.無料な上に食べ放題.そしてこの写真でわかるかどうかアレですが,相当ヘルシー.

1 日目

2 日目

3 日目

4 日目

5 日目

ロボット分野の先端を走る企業の一つと言って何ら語弊はなく,世界中のロボット研究者がこの企業のソフトウェアを使い始めています.そんなわけで社員も自信満々,そもそも色んな所から引き抜かれてきた博士号持ちの凄腕ばかりらしく,あのライブラリ作った A さんだー,とかあのモジュールの設計した B さんだーとかそんな人がウロウロしている.
正直,二年前にこの企業の存在を知った時から,ロボット業界に入るならゆくゆくはここで働いてみたいと思っていたが,見聞するにかなりのエリートしか採用してないらしいので,まだ無理だろうなと諦めてました.それが,短期雇用ではあるものの,人の縁で働けることに.まったく世の中わからないが,諦めず,戦略を立てて目標に向かえば,叶うこともあるんだなと.巡り合わせに驚きまくっています.取り敢えず,なんとかくらいついて行きます.

スタートアップ企業への私的感想

日本ではよくベンチャー企業という言い方をされる,新しく立ち上がったばかりの企業,米国では start-up company もしくは単に startup と言う事が多いです.Startup と呼ばれるのは,単に"新規企業"というだけでない気がしますね.例えば Dallas だと新しく会社を立ち上げてもこうは呼ばない気がするなあ.何ででしょう.
いづれにせよシリコンバレーに居ると無縁ではない.私も最近ついに人生初めて誘われました.WEB のサービス.ただでさえ就活中だったのでありがたい上に,連れが居るのでできれば Dallas に残りたい私に,遠隔でもええよ,というありがたいオファがあった.
元々,自分に合ってるかどうかは別として,Startup という存在には,二十代中盤で Software Engineer として働き始めて以降漠然と憧れています.他の社員と熱い気持ちをシェアしながら目標に突き進む感じね (だから私は昼夜関係なく働くことに違和感を持ってません).とはいえこの歳で追い求めるべきシロモノでもない気もしてますけど.
ただ,そういうポジティヴな状況はありながら,今回は見送りました.懸念の一つは給与がしばらくでないとのこと.利益が出ないうちは投資が得られない限り給与が出ないというのはまあそれはそうなのでしょう.私は二十代だったらともかく今は歳も歳だし,よっぽどやりたい仕事じゃない限り無給じゃやれない.それに無給で不安なのは責任や契約が不透明になった場合,予期しないこと (突然の解雇?というか) があっても反論できなかったりしそう.そうはいいながら,もし Dallas 勤務でいいのなら物価も California に比べれば安いし,今回に限っては実はこれは我慢できる範囲内.
我慢出来なかったのは,誘ってくれた人に対する疑念.話を拝聴し,頭が良さそうなのは文句無く,実際彼は現在トップスクールの MBA コースに通っていることでも明らか.彼のサービスの案が面白いものであることに私なんぞが異論を挟む余地は無い.だが無視出来なかったのは,Startup を本気で成功させるつもりならそれに集中すべきなんじゃなんじゃないの?と.学校通ってる場合なのか?そしてよく遊びにも行ってるっぽいし.まあ,頭も要領も良い人は私とは異人種なので,適正な息抜きをしつつ成功させるのかも知れんけども.でももし仮に私が無給のまま彼のチームのメンバとして,土日も働いた時に彼が遊びに行ってるのを Facebook に投稿してたりしたら,気持ちを保つのは難しい場面も出てくるでしょう.上でも触れましたが Startup で働く気持ちの源は熱意の共有だと私は勝手に思ってるので (違う?),そういう,気持ち周辺にヒビが入るとまず無理かなと.
Shark Tank という,視聴者がプレゼンして投資を得る TV 番組が好きなのですが,投資家サイドで出演している NBA Dallas Mavericks オーナーの Marc Cuban 氏は,賛同できるアイディアを持つ起業家に,やる気を測る質問をよくする.いつだったかある回では,Startup のうちは年収は $50K (4,500 万円) 未満で良いからとにかく汗して労働するのを厭わない奴じゃなきゃ投資できない,と自らの起業経験と重ねて強い非難の言葉を浴びせてました.
てことで,知見不足ながら感想をつらねましたが,Startup への憧れに関して結論づけると,憧れは憧れのままにして置いておこうかと.やはり自分はそういう,誰も通ってない土地を切り開いていく的なタイプではない*1ので.



Startup とは道なき所に道を作ることだとすれば,この写真の,道にとつぜん枝が生えてきた状況は一体何となるのか?

*1:私は,誰か数人が通って,安全はある程度確かめられたけどまだ成功かどうかは全然分からない,そんな状態で後に付いて行き,拡大していくタイプかなと.ニッチだなと.

再度短期仕事?

三ヶ月の短期の仕事を終え,次の仕事を探しています.次は長期の,いわゆる "社員" の仕事を探していますが,予想通り簡単には見付からず,とはいえ焦っても仕方ないので落ち着いてやってます.一方,応募もしてない有力企業 (仮に A 社) から,面識ある社員さん経由でインターンをしないかと誘いを頂き,検討中です.
アメリカでは "社員" 以外の契約形態としては,"Contractor / 契約社員" (契約社員は日本で言う派遣社員か?) と "インターン" (通常,学生が経験を積む目的で有期で就業する) の二つが一般的.米国の雇用形態については深く突っ込みませんが,どちらも福利厚生や手当が無いことが米国では多いのかも?何にせよ留学して工学修士まで取って卒業した後の仕事として,ベストではなく,今後のキャリアをこういった形態でずっとやっていくのは苦労が多そうです.ただし,諸条件の下で期間限定,例外的にオファを受けとって仕事することは私はアリだと考えています.
今回のオファはまさにその例外に当てはまるので検討しているわけです.まず A 社は最近のこの業界を世界的にリードする存在.そこで得られる経験も情報量も比類ない.次に給与.私が受験するような企業の正社員なみ (かそれより多い) らしく,待遇面としても短期仕事としては私が考えるには充分.食事は三食無償で提供されるし,インターン用の住居も付近にあるらしいし,金曜夕方は毎週ビールパーティらしいし (それはどうでもいいか!).
オファの連絡をくれた方は,たまたま会って,私も使っている技術を使った仕事をしている方なので,オファもらえるかなとかは一切期待せずに (求職中だとは一言書いたけど) コラボレーションのやり取りをしていたのですが (オープンソースの世界ですから),突然 (というかこの業界なら自然な流れか) インターン興味ある?と言って頂きました.彼自身が私と似た流れをたどっていて,ソフトウェアエンジニアとして数年働き,修士を取りに学校に通い,卒業後同社でインターン --> 正社員雇用,という流れらしい.卒業後インターンというのは決して一般的ではありませんが,例がないわけではなく,彼のようにうまく使って希望する途に進むことは可能なわけです.
この歳で・この経歴でいまだにインターンをすることに関して,そういうわけで例外として自分自身は納得していますが,キャリア設計の上で見落としていることがあるかも知れないので指摘頂ければ幸いです.



本文と関係ないが,Kansas 州 Wichita での写真.日本でもセレブ (を目指す女子) に人気が高い高級グローサリー "Dean & Deluca" の本社らしいけど,ただの倉庫にしか見えませんでした.周辺も倉庫地帯.ほんとに本社なのかー?
倉庫だ.

ロボットのハッカソンしてきた

先日職場でハッカソンがありました.機密にうるさい敏感な企業なので一般的な部分だけ少し書きます.まずハッカソンhackathon とは,短期間 (通常 1 日から 1 週間程度) の間に一箇所に集まり,なんらかの目的を設定して集中的にリソースを注ぎ込んで (人,時間,食事w) 開発を行うイベントで,言うまでもなくハッキング *1 + マラソンから来る造語です.有名な成果としては Facebook の Like! ボタンは同社での hackathon から産まれたとされています.
今回は職場のチーム計 13 名が二つに分かれ平日一週間で行いました.1 チームはセンサーと携帯端末のインテグレーションを行い,一方私が入ったチームはヒューマノイドロボットを用い (ヒューマノイド経験者は半数),両チームともある異なる家事をさせました.結果は両チームとも一応予定した機能の実装をほぼ/すべて達成でめでたしめでたし.初めて hackathon に参加したので以下まとまりないですが感想を.

  • かなり個人的な話ですが,ロボット業界に来てまだ数年なので,自分の手持ちのソリューションアイディアが少すぎたため,楽しいはずの機能仕様決めには意見を殆ど出せず,仕様が決まった後の実装屋としてのみの参加になってしまったのは残念 (覚悟してたから OK だが).ロボットの場合,実世界を知覚しないと始まらないので,センサーやマニピュレータ等のハードウェアや,それらに絡むソフトウェアライブラリをうまいこと使って*2目的を達成するわけですが,そのどれもまだ私は経験不足で,かつチームには経験豊富な人が三人いた (アドバイザ一人とロボティクス PhD 学生二人) ので,解決法を考えるプロセスでは彼らにオンブズマンにダッコチャンとなってしまった.ソリューション手段をあれこれ考えるのは既述の通りシステム開発の面白い部分なので,ここは要努力.
  • 実装ではマニピュレータを動かして物を掴んだり離したり移動したりという箇所を,マニピュレータ経験が無いにも関わらず,経験しておきたかったため担当しましたが,慣れるのに時間がかかり過ぎた.マニピュレータを地点 a から b に移動するその間の軌道を計画することを motion planning などと呼びますが,結局動的に計画するのは素人の私には難易度が高すぎ *3,静的に位置を決め打ちさせました.すると今度は自分の担当部分としてはやや時間が余ってしまいイマイチ challenging 感は薄れたのが残念 (チームメイトが担当した画像処理モジュールと結合し,物体の位置を把握して自動で掴むようにしたので,出来上がりは hackathon としてはまあまあのモノではあると思いますが).
  • ていうかマニピュレータ/アームって恐ろしく複雑ですね.予想はしてたけど.
  • 帰宅は毎晩午前様でしたがこれって日本企業や学生だと平時でも珍しくないですよね...とはいえ,普段一緒に密に働かない人同士が一緒くたで集中開発をする hackathon はやはり特別.あまり会話したことのない The Californian な感じのアドバイザがまだ三十前半のくせにベンチャーズなんか聴いてて,そのまんまやん!と同時に古クサ!って思ったり,仲間意識が当然強くなった.月曜早朝に朝食を一緒に食べて始まり,金曜夕方は BBQ で締め (残念ながら Dallas へ週末帰るフライトと重なってしまい BBQ はサラダ抜けでしたが).
  • 帰宅時刻をきにせず短期集中で仕上げる/スキルを身につけるというのは学生が経験を積むにはうってつけのスタイルだなと思う一方,経験豊富な人のヘルプが受けられる状態でないと,どん詰って捗らなくなり,人数を集中してる分失う時間も多くなる.今回はちょうど当日から着任した PhD 卒業目前の学生が大活躍したため捗ったが,彼が居なかったらとんでもないことになっていた.企業でも同じだろうけど特に教育機関で行う場合,スキルフルな人の人数を確保できるかは一つの焦点でしょうね.
  • 企業の業務として Hackathon を行う事に関して (ロボティクスに限りますが).まず一般的な前提として Web 等の純粋なソフトウェアに比べロボットは,ハードウェアが絡むのとタスクが簡単ではないのとで,開発スピードが遅いです.したがっていくら人を集中投下したとはいえ一週間で実現できることは限られ,まして製品直結のものが作られる可能性は低いでしょう.しかしながら,似た理由でそもそもロボットを使っての挑戦がなされてないタスクというのが世の中にはゴロゴロしており (例えば思い付きだけど,人の足の爪を切るロボットとか無いよね多分),短期でそういうった未試行課題に手を付けるのはとても有益でしょう.なぜなら試行してみることで,そのタスクでは何がどのくらい困難なのかが具体的に見えてきたりするから,研究者サイドとしてもマネジメントサイドとしても,今後の方針決めの材料として重要だった様子 (というわけで Hackathon の題材はその企業の商売ドメインから選ばれるのがまずは妥当かと).あと当然ですが成果の再利用が発生する.今回も,昨年夏に同研究所が行った Hackathon で作ったモジュールを利用してうまく動いた,なんてことがあった.
  • (Hackathon に限らないけど) 上述の新任者は,機能の実現方法を決めていく中で,必要なモジュールを外部の知合い/友人が持っている場合ためらいもせずメイルして取り寄せていた.上述の画像処理モジュールも根幹部分は LA の大学院生からファイルを送ってもらって実現.なんというか,そもそも今ロボティクス業界は open source の波がウネリまくっていて,私達のオフィスで開発しているソースコードも半分以上は BSD ライセンスで公開しているわけですが (老舗の部類に入る大企業としては公開するのはまだ珍しい方だと思う),損得なしで成果を共有しあう世界の研究者達 (或いは損得はどうにか精算されてるのか) の積極さに驚く一方,著作権だアイディア漏洩だなどとビジネス的なとこどうなんだろうとも気になった.後で訊いてみよう.

...と,いうように,ヒューマノイドに関して事前スキルが著しく足らなかったため,challenge という側面を楽しみ切れなかったのは残念ですが,それでも短時間で色々学ぶことができたのは収穫でした.今後もっとスキルが身についた時にはもっと楽しめるに違いない.

とあるロボット系企業の無料ランチにあり付いた.さすが California というべきか,かなりヘルシー.

*1:一般社会ではハッキング/ハッカーは悪い言葉として用いられますが,エンジニアの用語としては悪意を持った攻撃行為はクラッキングと呼ぶことが多く,改善の手段として分解/破壊を行うハッキングという行為自体はむしろ歓迎されます.

*2:場合によっては泥臭くても OK.解決法や実装の美しさは Hackathon では優先ではない.機能の実現が優先.

*3:自分の名誉のためというか,一応言っておくと,motion planning はプロにとっても簡単ではない.アドバイザも,今回は静的な planning を使うと最初から決めていた様子.