30歳過ぎから工学 vol.2

http://d.hatena.ne.jp/j130s/ から移行しました.オープンソースロボットソフトウェア技術者兼主夫. 高校・大学学部文系-->何となくソフトウェア開発業-->退職・渡米,テキサス州でシステムズ工学修士取得,しかし実装の方が楽しいと気付き縁があったロボティクス業界で再就職.現在 Texas 州内の産業用オートメーションのスタートアップに Georgia 州から遠隔勤務.

抽象化して考えるように教育する (カーネギーメロン大・NSF Dr. Wing)

ここ2年ほど, 年1回の情報爆発プロジェクトの報告会案内を受け取る度に, 日本は年度末なんだなあと気付かされています. そういえば事業仕分けで国のIT投資もよりシビアに評価するぞという気配を見せつけられましたが, 私がまだ日本で働いていた時に発足した情報系二大投資である経産省情報大航海とこの文科省の情報爆発に影響はあったのでしょうか. どちらも検索に関する国産技術の開発だと思いますが, 国がやる意味があるのかと賛否両論だった中, 私は賛成でした. 理由は Google は極めて便利ですが一社・一国集中はリスクが大き過ぎるし, (自然言語処理に大きな影響がある)マルチバイト言語圏で大規模技術開発ができるのは中国と日本でしょうから引っ張らないかんやろという(たぶん)特に珍しくない真っ当な理由でした(ちなみに参考; 2つのプロジェクトの立ち位置についての概説by東大辻井先生). 折しも昨日は第五世代コンピュータ計画に携わった恩師のお祝い会があったり, オバマ大統領が有人月面開発計画を凍結するかもという話があったり, 米日の国プロに思いを馳せる機会が偶然増えています. 何にせよ退職後とくに情報系各学界の最先端情報からは離れまくってるので, 報告会聞きに行きたいなあ...

銀ダラの西京焼き@Hanasho, Irving, Tx. 身が薄いのは, きっと脂の乗りがイマイチなのをなんとか旨くさせようという板前さんの工夫かと. 他のメニューは美味しかった.
ところで10日くらい前, 工学部が呼んだ下記ゲストスピーチに立ち寄りました. 計算機科学やロボット工学で名高いカーネギーメロン大(CMU)の方で, 米国立科学財団(NSF)の計算機部門の assistant director (副理事?). 講話は "抽象化して考える思考" の重要性と, 早期教育でその思考のトレーニングを行う方法を訴えておられたように思います.
"最先端"に触れられるかと期待して臨みましたが, あまり集中して聞けなかったため内容の理解は不確かで, 下記概要を読んで頂いた方が正確です. 英語的にも内容的にも正確に理解できないなりに感じたのは, エンジニア特にソフトウェア関係者にとっては, 抽象化して考えることはむしろ日ごろ当然のように行う癖のようなものになっているように思いますが, エンジニアのみならず企画や分析が絡むすべてのビジネスシーンで有効なはずなので, もっと流行って欲しい. 人と話していて時折, ちょっと難し気で抽象化/一般化した方が良さそうな事柄を一般化して言い換え(たつもりでい)ると"?"という反応をされ, ああそういう癖がない人はまだ多いんだなと感じることがあります*1. しかし私程度の者には"じゃあどうビジネスに有効なのか"と説得する能力はありませんから(多分そこも講話で触れられていたんだろうけれども...), ここで詳述しないし, こういう方の活動に期待する次第です.
ちなみに Dr. Wing のお話は, お立場からして情報分野のとても大きな趨勢に絡む話をなさるのかと思いきや, 割と一個人の研究/関心トピックに特化した話だったのが新鮮でした. 計算機科学&工学科主催ならまだ分かるが, 工学部主催とあって色んな学科の先生方のお顔が見えていたので, 話自体は Computer Science 色が強くない, 工学系の方なら理解できるであろうものだったけれど, ちょいと不思議でした. あと, 極めて私の無知によるものですが, 国の機関のトップになるような方が, ゴリゴリの計算機科学からは手を引いていて工学教育に力を入れている方であるというのは, 珍しいことではないのだろうか. 日本だとゴリゴリに研究実績のある方がそのまま組織のトップに据えられることが多い気がしているので(無知ですみません), それが悪いか良いかは分かりませんけれど, 人材育成という点からすると, より教育に関心を置いてる方をトップに据える人事は頼もしいなと.

Speaker: Dr. Jeannette Wing
Assistant Director, Directorate for Computer and Information Science and Engineering (CISE), The National Science Foundation
Professor, Computer Science Department, Carnegie Mellon University
Colloquium: Jan 20, 2010. 3:00 p.m - NH100
Hosted by Dr. Fillia Makedon

TITLE: Computational Thinking
ABSTRACT: My vision for the 21st Century: Computational thinking will be a fundamental skill used by everyone in the world. To reading, writing, and arithmetic, we should add computational thinking to every child's analytical ability. Computational thinking involves solving problems, designing systems, and understanding human behavior by drawing on the concepts fundamental to computer science. Thinking like a computer scientist means more than being able to program a computer. It requires the ability to abstract and thus to think at multiple levels of abstraction. In this talk I will give many examples of computational thinking, argue that it has already influenced other disciplines, and promote the idea that teaching computational thinking can not only inspire future generations to enter the field of computer science but benefit people in all fields.

*1:理解されないのは, 一般化の癖がないからではなく, 私が一般化に失敗しているため, という可能性は大いにありますが